シャネルのマトラッセ、クラシックフラップ、2.55——これらに使われているキャビアスキンは、粒状のつぶつぶとした表面が特徴のグレインドレザーです。ラムスキン(羊革)に比べると傷がつきにくく、日常使いへの耐性が高い素材として知られています。しかし「丈夫だから大丈夫」という誤解が、長期的な劣化を招くことも事実です。
今回は、キャビアスキンの素材特性をふまえた、自宅でできる正しいケア方法をお伝えします。
キャビアスキンの素材を正しく理解する
キャビアスキンは牛革(カーフスキン)を加工したもので、表面に型押し加工が施されています。ラムスキンのような自然なシボとは異なり、機械的な型押しで粒状のテクスチャが作られているため、表面の一粒一粒の谷間にホコリや汚れが入り込みやすい構造です。
また、表面には保護目的の薄いコーティングが施されていますが、これは永久ではありません。適切なケアで長持ちさせることができますが、間違ったケアで剥離を加速させてしまうリスクもあります。
使用後のルーティン:馬毛ブラシが主役
使用後は、馬毛ブラシで表面を軽くなでることが最も重要なケアです。粒状の谷間に溜まったホコリや繊維クズを取り除くことで、汚れが革に定着するのを防ぎます。力を入れる必要はありません。羽で払うような軽さで十分です。
コットンのやわらかい布で乾拭きする方もいますが、粒状表面には布の繊維が引っかかることがあります。毛足の細い馬毛ブラシの方が、この素材には向いています。
月1回のレザーコンディショナー
月に一度を目安に、革用コンディショナーを薄く塗布します。推奨はコロニルの「1909 シュプリームクリームデラックス」——ワックス分が少なく、浸透型のケアができます。塗布量は小豆大ほど。指の腹で伸ばし、20分置いてから乾いた布で余分を拭き取ります。塗りすぎは油分過多になり、かえって革を傷める原因になります。
保管の正しい方法
保管時は必ず付属のダストバッグに入れてください。光(特に直射日光と蛍光灯の紫外線)は革の色褪せを加速します。形を保つために内側には白いコットン製の詰め物(ティッシュではなくコットン)を使用するのが理想的です。湿気も大敵で、除湿剤を近くに置くか、風通しの良い場所での保管を心がけてください。
絶対にやってはいけないNGケア
ウェットティッシュの使用は厳禁です。アルコールや防腐剤が含まれており、革表面の天然油脂を急速に奪います。使用直後は綺麗に見えても、数週間後に乾燥・ひび割れが発生するケースを私たちは何度も見ています。
同様に、除菌スプレーを吹きかける方がいますが、これも革には有害です。香水が革の近くにかかることも避けてください。アルコール成分が色褪せや変色を引き起こします。また、ビニール袋での保管は厳禁です。革は呼吸する素材であり、密閉することでカビと結露の原因になります。
正しいケアは、手間をかけることではなく、「やってはいけないことをやらない」ことから始まります。このガイドを参考に、大切なシャネルを長くお使いください。さらに詳しいケアや、すでに劣化が気になる場合はお気軽にご相談ください。

