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バイト代を貯めて初めて買った宝物。20代大学生のお財布を修復した日

フェンディ ズッカ財布 ビフォー

美咲さんは22歳の大学3年生でした。週3日、ファミリーレストランで6ヶ月間アルバイトをして、58,000円を貯めたそうです。そのお金で、サンローランのコンパクト財布を購入しました。

「初めての高いもの、って感じです」と彼女は言いました。「何ヶ月もサイトを見て、色を変えて試したり、家でも何度もシミュレーションして」。ブラックのグレインドレザーに、ゴールドのYSLロゴ——実物を見た瞬間に決めた、と。電車で持ち帰る途中も、ショッピングバッグを膝の上に置いて何度も覗き込んだと笑いながら話してくれました。

それから2年間、毎日使い続けました。

2年間の毎日使用が残したダメージ

財布の状態を確認すると、コーナーの4箇所すべてに深い摩耗がありました。ブランドの革製品は通常、コーナーに塗料による保護層(エッジコーティング)が施されていますが、それが完全に剥がれ、その下のベース素材まで露出している箇所もありました。正面パネルの色は全体にわずかに褪せ、頻繁に触れるカードスロット周辺はさらに顕著でした。ジッパープルには細かい引っかき傷が多数。カードスロット3枚分は、カードの出し入れで革が伸び、ルーズになっていました。

お姉さんに私たちのことを教えてもらったそうです。「買い替えも考えたんですけど、同じものを買っても、なんか違うような気がして」。その感覚は正しいと思います。同じ型番の新品であっても、それはこの2年間の記憶を持っていない。

修復の工程——コーナーから、記憶を塗り直さずに再建する

コーナーの修復には、カラーマッチングした革充填剤を使用します。単に塗料を盛るのではなく、革の繊維構造に馴染む柔軟な素材で形を再建し、その上から段階的に色を合わせていく工程です。ポイントは、修復部分だけでなく周囲への自然なグラデーション。コーナーだけが極端に綺麗になると、かえって修復が目立ちます。少しずつ中央に向かって馴染ませることで、全体として一体感のある仕上がりになります。

ジッパープルは金属用コンパウンドで磨き、細かいキズを均しました。カードスロットは、内側から革の弾力を整え、カードが適度な張りで収まるよう調整しています。全体のクリーニングと保護オイルの塗布で、革本来の艶が戻りました。

フェンディ 財布 リペア後

初めてのラグジュアリーが持つ、特別な意味

修復した財布を受け取った美咲さんは、カウンターの前でそれを両手で受け取り、ぎゅっと胸に抱えました。「また使える…!」という言葉が、静かに、でも確かに出てきました。

人生で最初に自分のお金で買ったラグジュアリー品には、特別な意味があります。それは単なる「いいもの」ではなく、自分の趣味と価値観を初めて形にしたという記念碑です。誰かに買ってもらったものではなく、自分で稼いで、自分で選んだという経緯が、物に宿ります。

そういうものを、「コーナーが傷んだから」という理由で手放してしまうのは、もったいないと私たちは思います。修復できるなら、修復する。その選択が、大切にする気持ちを次の年月に繋いでいくのです。

その後、美咲さんからLINEが届きました。「友達に修理したって言ったら、すごい!って羨ましがられました。ありがとうございました」。その一文が、私たちの仕事の答えだと感じます。

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